院長ご挨拶

精神の自由が担保されるより地域に溶け込む病院へ

当院は仙台市の中心部にありまして、創立して1世紀を超え、東北以北でもっとも古い精神科病院と言われています。立地を生かしたさまざまな都市機能をフルに活用し、長い歴史の中で、先人が培って下さった有機的で発酵的な病院を内包する治療文化に育まれ、地域に開かれた病院地域精神医学、さらには当事者主体の自助グループ育成とその連係を基盤に発展した嗜癖行動精神医学を柱として現在に至ります。
昭和30年代から院内断酒会が開かれ、全断連初代会長の訪問を受けたという記録があり、昭和53年からアルコール病室、次いで昭和 56 年にアルコール病 棟(60 床)が設置され、「旧久里浜方式」に基づくプログラムが整備され、社会資源として「宮城県アルコール問題研究会」が開始されました。飲酒低減療法、CBT(認知行動療法)、CRAFT(コミ ュニティ強化と家族トレーニング)などプログラム内容の 変化、新たな薬物の出現など紆余曲折を経て、開放処遇、本人の意思確認(“今より少しでも楽になりたい”という意思)、 教育入院、家族支援、自助グループとの連携や設立支援など の基本方針は引き継がれ、治療対象も、ギャンブル障害、ゲーム障害、摂食障害、窃盗障害などの行動嗜癖に拡がりました。
2011年3月11日の東日本大震災に被災した際には、いち早く、沿岸部の被災者の方を支援する支援者の方の支援活動を開始し10年続けました。2019年には宮城県で唯一の依存症対策拠点・専門医療機関として指定を受けました。
今回のコロナ禍におきましては幸いなことに院内の感染対策委員会が機能し、2021年12月現在クラスターの発生は回避されています。何かと自粛が求められる時代ではありますが、患者さんと相談しつつ、感染対策しつつも、精神の自由が担保される、つまり精神医療そのものを行う病院として存在できればと考えております。                                 (2021年12月記)

東北会病院院長 金 仁