アルコール使用障害

「アルコール使用障害」とは

アルコール使用障害は、本人の意志の弱さなど性格が原因と考えられた時代が長く続きました。近年、アルコール使用障害は、お酒への欲求を抑えられず、飲み方のブレーキが故障し、自分自身のこころや身体だけではなく、周囲の人に迷惑をかけるようになった状態をいい、欲求や行動をコントロールする脳の働きの低下により起こることが明らかとなりました。アルコール依存症は医学的な病気であり、治療可能、回復可能な病気です。

「アルコール使用障害」が疑われる症状

国際疾病分類(ICD)による診断基準では、
①強い飲酒欲求(渇望)
②飲み始めの時間、飲みおさめの時間、予定した酒量を守れないなど、飲酒コントロールの喪失
③耐性の増大
④ふるえ、発汗、不眠、幻覚などの離脱症状
⑤飲酒中心の生活
⑥自らの問題飲酒を認めない(否認)
のうち過去1年間に3項目以上満たす場合、依存症と診断します。また、米国精神医学会(DSM-5)では、これまでの「依存」や「乱用」に変わって、より広く、「アルコール使用障害」という用語が使われ、症状の軽い人から重い人まで治療の対象とするようになりました。また治療の目標も禁酒だけではなく、減酒治療も行われるようになりました。

【アルコール使用障害チェックリスト】

過去1年間に次の項目3つ以上が当てはまる場合依存症の疑いがあります。

  • アルコールを飲みたいという強い欲求がある
  • 飲酒の開始、酒量、飲酒量に関して、その行動を統制することが困難だと感じる
  • 飲酒を中止もしくは減量したときに振戦、発汗、不安、焦燥感、嘔吐、幻覚、てんかん発作等起したことがある
  • 飲み始めた当初より、アルコールの効果を得るために飲酒量が増えている
  • 飲酒の為に他の楽しみや興味が次第に減ってきている
    また、飲酒せざるを得ない時間や回復するのに要する時間が長くなっている
  • 明らかに有害な結果が起きているにも関わらず飲酒を続けている
    (肝機能障害、認知機能障害、うつ病など)

「アルコール使用障害」の治療の流れ

治療は、悩んだ家族の相談から始まります。アルコール依存症は、本人が飲酒問題を否定や軽視し、専門機関を受診することが少ないため、まず家族に働きかけ、本人を治療につなげるためのプログラム参加を勧めます。
本人が受診すると、
①身体の健康をとり戻し、
②禁酒あるいは減酒を維持するための方法を練習し、次いで、
③再発を予防し、安定した社会生活を過ごすための治療が行われることになります。
特に③では、医療機関だけではなく、断酒会やAAなどの自助グループ参加が大きな役割を果たします。

「アルコール使用障害」の治療の流れ図

治療プログラム

外来治療プログラム

毎週火曜日に開催される「アディクションビギナープログラム」では、心理教育プログラムにてアルコール依存症がどんな病気かを理解していただき、グループセラピーで自身の体験を話していただくことで自分だけではないという思いを持っていただくことと、他の参加者の話からお酒を止めて行くヒントを得ていただています。
デイケアプログラム「アサープ」は、飲まない生活を維持し生活の質を向上していただくためや、職場復帰前のリハビリのために、火曜日以外の週4日通っていただいています。プログラムはグループセラピー、心理教育プログラム、スポーツの他にアートセラピー、オリジナルワークなどのレクリエーションも交えています。社会生活を飲まずに送っていただくためには自助グループに通うことも重要であり積極的に勧めています。

アディクションビギナープログラム

このプログラムは、アルコール・薬物障害で治療中(入院・外来)のご本人と、ご家族等を対象としています。

入院治療プログラム

アルコールのない生活を支えていくためのグループセラピーを軸としたリハビリテーションプログラムを行っています。主に、精神療法、心理教育プログラム、グループセラピー、運動、外出外泊など、日課や週間予定表に沿って入院治療生活を過ごしていただきます。
病棟内では、素面(しらふ)での規則正しい生活習慣の確立を行います。また、「酒のない社会」での生活を体験し、飲んでいた頃の自分と素面の自分を比較することにより、自身を見つめ直すことができます。そしてグループセラピーに参加することで、同様の問題を抱えた方々と問題を共有し分かち合うことができます。いずれも集団生活を通してスタッフや人との関わりが治療として大切になります。