統合失調症
「統合失調症」とは
統合失調症は約100人に1人が罹患する大変ありふれた病気です。思春期の後期から青年期にかけての人生の早期に発症し、幻聴や妄想といった陽性症状をはじめ、感情の平板化や意欲減衰といった陰性症状を呈し、社会生活が妨げられてしまいます。発症から治療開始までの未治療期間が長いと、予後が悪化することが知られており、早期発見と早期治療が大変重要と考えられています。
なぜ統合失調症になってしまうのか、未だ十分に解明されていませんが、統合失調症患者の脳は、広範な部位の体積減少が生じていることが報告されており、脳の構造異常が進行性に生じる病気であることが明らかとなっています。
「統合失調症」が疑われる症状
統合失調症の典型的な症状の経過は、思春期後期から青年期にかけて聴覚過敏、引きこもりなどの前駆症状を認めた後、幻聴や妄想などの陽性症状を呈して顕在発症となります。これらの症状を繰り返すうちに感情の平板化や意欲の減衰といった陰性症状や、認知機能の障害が進行し、社会機能の低下がみられるようになります。
医療は日々、目覚しい進歩を遂げていますが、現時点ではCTやMRI検査、その他の検査機器でも統合失調症と診断できるものはありません。そのため、当院においても世界的に基準を統一して作成された操作的診断基準を診断に採用しています。
この1か月次の症状がみられますか?
- 自分を責めたり命令してくる正体不明の声が聞こえる
- 極度の不安や緊張を感じるようになった
- 自分は誰かに操られていると感じる
- みんなが自分の悪口を言ったり嫌がらせをすると感じる
- 楽しい、嬉しい、心地よいなどと感じなくなった
- 頭の中が騒がしくて眠れなかった、また眠りすぎるほど眠るようになった
- 人と話すのが苦痛になり、誰とも話さなくなった
- 独り笑い、独り言を言うようになった
- 直前のことを思い出せなくなったり、頭が混乱して考えがまとまらなくなった
- 部屋に引きこもり、1日中ぼんやり過ごすようになった
- 自分の考えていることが周りにもれていると感じることがある
- ささいなことで過敏になり、注意をそがれたり、興奮するようになった
- 誰かから監視されたり、盗聴されたり、狙われていると感じる
- 一つのことに集中したり、とっさの判断ができなくなった
- 何をするのも億劫で、意欲や気力がなくなった
「統合失調症」の治療の流れ
問診により統合失調症と診断、または疑わしい場合には、抗精神病薬に投与による薬物療法を行ないます。また精神療法を含む心理的社会的介入をあわせて行ないます。抗精神病薬により陽性症状を緩和し、再発を予防し、生活の質を向上させ、社会復帰を目指します。
在宅のまま通院治療を行なうのが原則ですが、症状が顕著で精神運動興奮が強い場合や死にたい気持ちがある場合などのほか、家庭での対応が困難な場合や家庭環境自体が患者さんの症状に深刻な影響を与えていると考えられる場合には入院加療を行います。入院中も、抗精神病薬の投与による薬物療法と心理社会的療法をあわせて行ないます。
精神症状が激烈である場合に、外界の刺激に患者さんが過敏に反応してしまうことがあるため、患者さん自身を守る目的で一時的に隔離や身体拘束を行なうことがあります。症状が安定した場合には可及的速やかに解除します。
治療プログラム
外来治療プログラム
上記の通り、抗精神病薬の投与による薬物療法と心理社会的療法をあわせて行ないます。幻覚や妄想などの急性期の症状が改善しても、その後陰性症状や認知機能障害が持続することが多く、再発予防と社会機能の改善が大きな目標となります。
治療初期にはストレスの多い人間関係や環境、ライフイベントを避けるように環境を調整し、安定期には過剰な負担がかからないように現実的な目標設定を行い、ストレス状況に上手に対処する能力の養成を目指します。
【作業療法】
外来作業療法では、その人らしい地域生活をサポートすることを目的にグループ活動を行っています。統合失調症の方を対象とし、主治医の指示のもとご参加いただきます。個人によって「楽しむ時間をつくりたい」「集中力をつけたい」「日中に活動して生活リズムを整えたい」「人と交流したい」など様々な目標にむけ活動しています。
主な活動内容は、以下の2つです。
①お話会:「自分らしい生活」や「症状との付き合い方」をテーマに話し合い、集まったメンバーと苦労や工夫を分かち合います。
②活動の時間:週代わりで各種作業活動(手工芸/ストレッチなどの運動/ストレス対処法についてのグループワーク等)を行います。
入院プログラム
神経過敏、衰弱状態に陥っている身体を休んでもらうために十分な休息を第一に考えています。入院中のプログラムとしては作業療法と病棟ミーティングを実施しています。
作業療法は、他者の影響を受けず物事に集中でき、普段の入院生活では見ることができない本人様の能力を発見することがあります。またそれは退院後の趣味や仕事に活かすこともできます。
病棟ミーティングは、本人様の思いや考えを言語化する大切さを感じてもらい、他者の話を聞きながら自分に置き換え“自分ならどうだろうか”と考えるミーティングです。