薬物使用障害

「薬物使用障害」とは

「薬物使用障害」の「薬物」とは、覚醒剤、大麻、危険ドラッグ、シンナー、抗不安薬・睡眠薬、鎮痛剤などがあります。これらは脳内報酬系という快感中枢を刺激し、通常では味わえない気分の変化…多幸感や高揚感、陶酔感など…をもたらします。薬物を使い、いい気分になったり苦痛を和らげた人の中には、同じ体験を求めて薬物使用を繰り返す人がいます。そして使い続けるうちに問題が生じ、我慢しなければと思いつつ使用しては後悔するという悪循環に至ります。
このように、薬物使用障害とは薬物を使い続けるうちに生活に支障をきたし、あたかも脳が薬物に乗っ取られ、自分の意思や行動が薬物にコントロールされている状態をいいます。

「薬物使用障害」が疑われる症状

薬物使用障害になると、薬物使用は気晴らしや楽しみではなく苦痛をもたらす行動に変わってしまいます。以下のような使い方になっていたらぜひご相談ください。

【薬物使用障害チェックリスト】

過去1年間に次の項目3つ以上当てはまれば依存症の疑いがあります。

  • 薬物を使用したいという強い欲求がある
  • 薬物使用の開始、終了、使用量のコントロールが困難であった。
  • 薬物使用を中止もしくは減量したときに振戦、発汗、不安、焦燥感、幻覚、興奮といった症状が出現することがある
  • 薬物を使用し始めた当初より、効果を得るために使用量が増えている。
  • 薬物使用の為に、それにかわる楽しみや興味を次第に無視するようになり、その物質を摂取せざるをえない時間や回復するのにかかる時間が長くなっている。
  • 明らかに有害な結果が起きているにも関わらず薬物の使用を継続している。

「薬物使用障害」の治療の流れ

薬物使用障害は回復可能な病気です。うまく使用することが難しいため、やめ続ける必要があります。気晴らしやストレスへの対処として使用してきたことを踏まえ、薬物以外のストレスとの付き合い方を考え実践していきます。
治療の基本は外来です。後述のプログラムを基に、薬物をやめ続けられるよう新たな生活習慣を作ります。何年薬物をやめていても時々「使いたい」という欲求が湧くと言われていますので、一定期間の通院が必要です。そして、回復施設のDARC 、NA(Narcotic Anonymous)といった自助グループに参加し、薬物をやめる仲間を作ることも回復の後押しになります。また、通院で薬物が止まらない場合、精神症状のため生活が困難な場合は入院治療を提案します。

「薬物使用障害」の治療の流れ図

治療プログラム

外来治療プログラム

「Dot.」は、薬の種類(違法・処方)を問わず、「薬物をやめたいのに中々やめられない」「欲求が沸いた時にどう対処していいかわからない」などでお悩みの方のためのプログラムです。
テキストを用いて、「薬物のメリット・デメリット」「欲求が湧くきっかけを把握する」「欲求への対処を練習する」「自分の支えになるものを把握する」などのテーマで話し合い、自分に合った少しでも楽になるためのヒントを探していきます。1クール全12回で、どの回からでもご参加いただけます。相談できる場がなく一人で悩んできた方にとっても、できるだけ安心して、正直な気持ちや経験を分かち合える場所を目指しています。
※参加希望の際は、主治医にご相談ください。

入院治療プログラム

薬物のない生活を支えていくためのグループセラピーを軸としたリハビリテーションプログラムを行っています。主に、精神療法、心理教育プログラム、グループセラピー、運動、外出外泊など、日課や週間予定表に沿って入院生活を過ごします。
依存の根は同じであるという考えから、入院病棟ではアルコールや他の依存症の方と同じプログラムに参加しています。個別プログラムとして、外来の薬物依存症集団療法プログラムDot.に入院中も参加することができます。
病棟内では素面での規則正しい生活習慣の確立を行い、またグループセラピーに参加することで、同様の問題を抱えた方々と問題を共有し分かち合うことができます。治療では集団生活を通してスタッフや人との関わりが大切になります。